関東の潮溜まりで採集できるチョウチョウウオたち
海の採集家たちにとって、採集の主役と言えばチョウチョウウオではないでしょうか。
一方で、海の生き物が好きだけど、初心者の方々は探してもチョウチョウウオが見つからなかったり、種類が分からないということがあると思います。
そこで、こちらでは関東の潮溜まり(タイドプール)や漁港で採集・観察できるチョウチョウウオの種類をまとめ、また簡単に見つけ方も紹介します。
チョウチョウウオとは
チョウチョウウオとはチョウチョウウオ科の海水魚で、世界中に約120種が分布し、日本でも50種ほどがいるとされます。
非常に美しい魚で、シュノーケリングやダイビングの観察対象としても、海水魚飼育の対象としても人気を得ています。
暖かいサンゴ礁に生息するため、沖縄などの南国では見る機会が多いのですが、本州ではコツが分からないとなかなか出会うことはできない魚となっています。
チョウチョウウオをはじめとした死滅回遊魚採集の本として、超おすすめの本が「磯採集ガイドブック」になります。
2004年の本で、少し古いですが、本州における死滅回遊魚採集の情報が詰まっています。
2020年現在、死滅回遊魚採集関連の本で、いまだにこの本以上の本には出会ったことがありません。
チョウチョウウオの採集
関東をはじめとした本州でチョウチョウウオを採集する場合、必要な情報は時期・場所・捕まえ方となります。
ここでは簡単に解説していきたいと思います。
チョウチョウウオをはじめとした、死滅回遊魚たちの初心者向け採集方法について、より詳しくはこちらにまとめているので、良かったらご覧下さい。
時期
夏になると、チョウチョウウオの稚魚は黒潮にのって本州まで流れ着き、浅瀬で冬を迎え、多くはそのまま寒さに耐えきれず死んでしまいます。
これが死滅回遊という現象です。
そのため、黒潮に乗って流れてきて冬を越せない魚たちは、一般的に死滅回遊魚と呼ばれます。
死滅回遊魚採集に適した時期としては7月から10月ころです。
7月になると磯でちらほら死滅回遊魚が見られるようになり、10・11月ころまで採集が可能です。しかしながら、到着したチョウチョウウオをはじめとした死滅回遊魚は徐々に大きくなり、捕まえづらくなります。
そのため、個人的にはかなり稚魚が大量にたどり着き、まだそこまで大きくなっていない8月~9月が量的にも捕まえやすさ的にもベストだと思っています。
ただし8月~9月にかけては台風が頻繁に発生し、危険なクラゲ等も増えるので、泳いでの採集の場合は細心の注意を払うようにしてください。
場所
死滅回遊魚の採集に適した場所としては、黒潮に近い海岸の磯か漁港となります。
本州の中で有名な採集スポットとしては、和歌山の紀伊半島、静岡の伊豆半島、千葉の房総半島、神奈川の三浦半島です。
大事なのは、太平洋側で、黒潮の流れに近い海岸であることです。
サンゴ礁も群生する紀伊半島では、毎年かなりの数の死滅回遊魚が見られますが、逆に三浦半島や房総半島では、紀伊半島であまり見ない魚が多く観察できたりしますので一長一短だと思っています。
磯での採集であれば、わざわざ海に入らなくても、膝まで届かないほどの浅い潮溜まりで、岩やサンゴの隙間に隠れるチョウチョウウオを捕まえることができます。
特に潮溜まりでは隠れやすい場所があることが大事で、大きな石があり、その下に隠れるスペースがある場所などでは、5分くらい見てるとひょっこりと1cmほどの極小チョウチョウウオが姿を現すことがあります。
捕まえ方
チョウチョウウオを見つけても、捕まえるのが難しいです。
潮溜まりならまだしも、広い場所で、シュノーケリングでの採集となると魚のほうがはるかに動きが素早いうえ、四方八方に逃げられます。
そのため、網をもって追いかけまわすだけでは、多くの場合、逃げられて隠れられてしまいます。
そこでコツとして、網2本で戦うことをおすすめします。
隠れる場所が少ないところまで追い込み、網1本は動かさず、もう1本で網の中に入るように誘導します。
誘導の時も素早く網を動かさず、ゆっくり追い込んでいくと、比較的すんなり網に入ってくれることが多いです。
採集は慣れも大事なので、よくいるソラスズメダイやオヤビッチャなどで練習してみてください。
おすすめの網はこちらで紹介しているので、良かったら参考にしてください。
チョウチョウウオの飼育
チョウチョウウオを捕まえたら飼育してみたいですよね。
チョウチョウウオを採集すると、子供たちも大人も誰しもがそう思い、飼育にチャレンジして高確率で失敗します。
メダカを飼育するのとはわけが違います。
難易度が段違いです。
海水魚の中でも水質・水温に敏感で、喧嘩しやすく、ストレスを感じやすく、病気になりやすいです。
とはいえ、すでにチョウチョウウオを長期飼育する方法は確立されており、数万円かければ、比較的安定してチョウチョウウオを飼育できる世の中になってきています。
こちらで私なりのチョウチョウウオ飼育方法を洗いざらいまとめてみたので参考にしてください。
我流の部分もあり、全てが正しいわけではないと思いますが、紹介している方法でかなり安定して導入・維持できるようになってきました。
関東で採集できるチョウチョウウオの種類
チョウチョウウオ科の仲間で、関東でよく採集できる種が6種類知られており、それがチョウチョウウオ(通称ナミチョウ)と外房5種と呼ばれるトゲ、フウライ、チョウハン、アケボノ、セグロです。
まずは彼らを紹介します。
そして、そのあと、それ以外の関東で見られるチョウチョウウオの仲間をご紹介していきます。
チョウチョウウオ
ナミチョウ(チョウチョウウオ)です。
単にチョウチョウウオと言ったら基本的にはこの子のことを指します。しかしながら採集家は他の珍しいチョウチョウウオたちも含めてチョウチョウウオと呼ぶため、普通のチョウチョウウオは「並みのチョウチョウウオ」という意味でナミチョウと呼ばれます。
毎年、必ず採集できる種類で、チョウチョウウオ科の中では最も本州で多く見られる一種です。
漁港にも磯にも寄り付き、かなり浅い潮溜まりにも入ります。
6月にもなると稚魚が姿を見せ始め、和歌山などでは成魚も見られるため、本州で越冬している個体も少なくないようです。
トゲチョウチョウウオ
トゲチョウチョウウオはナミチョウに次いで多く見られる種です。
磯にも漁港にも多く姿を現します。
綺麗な白と鮮やかな黄色がとてもきれいな種で、水槽の中でもとても映えます。
フウライチョウチョウウオ
フウライチョウチョウウオは、トゲチョウチョウウオに似ますが、体の白と尾側の黄色の間に黒いラインが入るので一目で見分けがつきます。
トゲチョウと同じく、磯でも漁港でも数多く見られるチョウチョウウオです。
レア種であるニセフウライチョウチョウウオと似ていますが、そこまで考えなくていいと思います。
チョウハン
チョウハンはナミチョウによく似る種ですが、口先が黄色い点と体の黄色がかなり濃いため、慣れると容易に見分けがつくようになります。
漁港よりも磯でよく見ることが多く、8月下旬ともなると、トゲチョウやフウライより多く見る磯もあります。
飼育も比較的簡単なイメージです。
アケボノチョウチョウウオ
アケボノチョウチョウウオは、黄色の縁取りが特徴的で非常に美しいチョウチョウウオです。
磯で見ることはあまり多くなく、漁港につきやすい種です。
房総では良くアケボノが群れて泳いでいる漁港もあります。
セグロチョウチョウウオ
セグロチョウチョウウオは、背中に大きな黒い模様があることが最大の特徴です。
外房5種の中では最もレアな種で、たまに見つけると心躍ります。
磯より漁港で見ることが多く、飼育も比較的容易な種になります。
トノサマダイ
トノサマダイは全身黄色に黒いスポットが浮かぶかわいいチョウチョウウオです。
着底した個体は枝サンゴについていることが多く、関東ではレア種ですが浮遊期の稚魚が流れ藻などについていることがあります。
関東での採集に限ると、外房5種からさらに難易度が上がります。
紀伊半島では枝サンゴの隙間に潜んでいる姿をたびたび目にします。
上手く死サンゴの中に誘導できれば採集しやすいです。
ゴマチョウチョウウオ
ゴマチョウチョウウオは薄い黄色地にゴマのような黒い点々が特徴のチョウチョウウオです。
比較的珍しいチョウチョウウオで、関東ではあまり見る機会はありません。
ハタタテダイ
ハタタテダイは2本の黒いラインに長く伸びる旗のような背びれが特徴です。
チョウチョウウオ科ではありますが、ハタタテダイ属になり、上記であげたチョウチョウウオたちとは、少し異なります。
関東でも漁港などの岸壁で良く見られ、磯でもたまに見かけます。
紀伊半島まで来ると一つの漁港で数十匹が見られることもあります。
まとめ
今回はチョウチョウウオに注目して採集・種類について紹介しました。
ここで紹介したものはあくまで関東で採集しやすいチョウチョウウオたちで、実際はもっと様々な種類のチョウチョウウオたちが黒潮に乗って本州まで到達しています。
実際、フエヤッコダイやスダレチョウチョウウオなどのレア種の報告もたまにあるので、運が良ければ採集できるかもしれません。
飼育は難しいですが、いつまでも見ていられる魅力もあります。
また、死滅回遊魚はチョウチョウウオ以外にもたくさんいるので、ぜひ海でどんな魚がいるのか覗いてみてください。
海水魚探索・採集に関する記事はこちらでまとめているので良かったらご覧ください。
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