【潮溜まり】死滅回遊魚採集のコツ【初心者向け】
夏と言えば死滅回遊魚のシーズンですね。
死滅回遊魚と言うと、あまり広くは知られていませんが、実は色鮮やかな美しい魚たちが、夏になると関東や関西の海までやってくるのです。
その原理としては、黒潮(日本海流)と呼ばれる暖流が南の海から流れ込んできます。
そしてその流れに乗って、南方の色とりどりの魚たちの稚魚・幼魚が流されてくるというわけです。
流されてきた魚たちは夏~秋にかけて、太平洋側の日本列島近海に住み着きますが、冬が訪れるとその寒さに耐えきれず、死んでしまいます。
これが死滅回遊魚という名前の由来になっています。
一方で死滅回遊魚という単語は耳障りがいいものではなく、季節来遊魚という呼ばれ方もします。
近年、温暖化に伴い、海水温が上昇し、多くの死滅回遊魚たちが死なずに冬を越すようになってきたので、死滅回遊魚という呼び方もそろそろ廃れていくのかもしれません。
というわけで、今回は、そんな死滅回遊魚を捕まえたいと思われた、死滅回遊魚採集初心者の方に向けて、潮溜まり(タイドプール)での死滅回遊魚の採集方法のコツを伝授いたします。
なお、海には毒を持った生き物や、するどい歯やヒレを持った魚も多く、海に行く前に対策と予習、体調管理を忘れないようにしましょう。
死滅回遊魚採集の時期
死滅回遊魚採集の時期は、夏一択です
実際に死滅回遊魚の採集シーズンは、7月~11月ごろにかけてですが、秋になってしまうと、流れてきた魚たちが成長し、逃げ足が速くなるので、採集難易度が上がります。
7月はまだ夏が始まったばかりで個体数が少ないので、おすすめは、数が多く、かつ小さい個体が多い、8月になります。
死滅回遊魚採集の場所
死滅回遊魚採集におすすめの地域
死滅回遊魚は黒潮によって流されてきますが、その黒潮は日本列島の太平洋側を流れます。
つまり、太平洋沿岸地域で、より黒潮の流れに近い地域に多くの死滅回遊魚が訪れます。
例えば、関東では房総半島、三浦半島、伊豆半島の南部、関西では紀伊半島の南部に死滅回遊魚が近づきやすいと言えるでしょう。
死滅回遊魚採集におすすめのポイント
次はより詳しい採集ポイントですが、どこに行ってもいるというわけではありません。
魚たちにとっても住みやすい環境と住みにくい環境があり、住みやすい環境に魚たちは集まります。
そして、死滅回遊魚の幼魚の多くにとって、最も住みやすい環境が潮溜まり(タイドプール)になります。
他にも波が穏やかな漁港なんかにも幼魚たちが寄り付くため、採集家の中には漁港などの岸壁での採集を好む方もいますし、ダイビングや素潜りで海に潜り、レアものを狙う方もいますが、ここでは最も簡単な潮溜まりでの採集に絞ろうと思います。
なによりも安全ですしね。
死滅回遊魚採集におすすめの潮溜まり(タイドプール)
潮溜まりとは、満潮時に満ちて海に浸っていた場所が、干潮時に陸地になり、水たまりとして残った場所を指します。
潮溜まりは磯の地形によって、様々な形を持ちますが、潮溜まりが生じるような、入り組んだ岩礁では、外敵が入ってこられないこともあり、小型の海の生き物がたくさん生活しています。
同じ潮溜まりでも、魚が多い潮溜まりと、少ない潮溜まりがあり、平坦で浅く、隠れるところが少ないような潮溜まりには魚はほとんどいませんが、狭くても、隠れるところが多い、複雑な地形や石が多い場所では魚が多いです。
死滅回遊魚が多いのは、もちろん後者ですが、隠れる場所が多いというのは、別の言い方をすると、いても捕まえるのが難しいということになります。
そのため、なるべくシンプルな潮溜まりで、隠れる場所が少しだけある潮溜まりでターゲットを見つけることが最善手になります。
死滅回遊魚採集におけるおすすめのターゲット
今回は初めての死滅回遊魚採集におけるおすすめの採集ターゲットをご紹介します。
チョウチョウウオの仲間
もちろん、死滅回遊魚の採集と言えば、その目玉はチョウチョウウオの仲間になります。
こちらの画像は2019年の夏に、串本の潮溜まりで採集したチョウチョウウオの一部を上から見たものになりますが、これだけで綺麗なのが分かるでしょうか?
4種全て種類が異なり、ゴマチョウチョウウオ、トノサマダイ、チョウハン、トゲチョウチョウウオとなります。
ちなみにどうでもいいですが、死滅回遊魚採集家は上から見ただけで種類を見分けることができます。
なので、潮溜まりの上から見つけただけで、瞬間的に種類を判別できます。
チョウチョウウオは、死滅回遊魚採集の華ではありますが、決して素人が簡単に捕まえられるわけではありません。
彼らは海ですばしっこく泳ぎ、岩やサンゴの隙間と言う隙間に隠れます。
なので、ターゲットはチョウチョウウオの仲間の中でも小さな個体、最低でも3cm以下、さらにできれば2cm以下の個体を狙いましょう。
小さな個体ほど、人への警戒が少なく、かつ、逃げ足も遅いです。
そのため、初心者がチョウチョウウオの採集を目指すのであれば、小さければ小さいほど確立が上がります。
ついでにチョウチョウウオを捕まえた後のことを言っておきますが、飼育はなかなか難しいです。
水質管理、餌付け、温度管理と飼育における課題は多いです。
チョウチョウウオの仲間は非常に病気にかかりやすいので、環境が適さないとすぐに白点病などで死んでしまいます。
その一方で、お金をかけてしっかり環境を整えてあげると、ほとんど世話がいりません。
我が家で飼育するチョウチョウウオ水槽も、最悪、ひと月放置してもコケが生えるだけで特に問題は起こりません。
採集できるチョウチョウウオの種類はこちらでまとめているので参考にしてください。
スズメダイの仲間
潮溜まりで美しく輝く死滅回遊魚としてスズメダイの仲間が挙げられます。
黄色に美しい青のラインが入るミヤコキセンスズメダイや、ブルーに輝くソラスズメダイなんかは、関東の磯でも良くお目にかかります。
何しろ光るので目立ちやすいですし、数も多いです。
チョウチョウウオを探していると高確率で出会います。
こいつらの美しさに惹かれたら、チョウチョウウオ狙いからスズメダイ狙いにシフトするのもありです。
捕まえやすい小さな個体も、キラキラしていて目立つので見つけやすいです。
しかも、非常に丈夫で、飼育対象としても優秀です。
飼育する上での難点としては、攻撃的なので、他の魚との混泳に向かないのと、色落ちしやすくすぐに黒ずんでしまうことぐらいでしょうか。
ハコフグ
捕まえやすさだけで言うと、ハコフグが圧倒的に簡単です。
しかもかわいさもトップクラス。
石の下などに隠れていますが、見つけてしまえば動きは遅いので簡単に捕まえることができます。
チョウチョウウオを探しているとたまに見つかりますが、数は多くなく、関東ではあまり出会わない印象です。
見つけたらラッキーくらいに思っておきましょう。
ちなみにハコフグは皮膚から毒を出すことがあり、飼育する場合は単独飼育し、下手に刺激しないようにしましょう。
刺激すると防御反応として毒を分泌し、自分もその毒で死ぬことがあります。
その他
これら以外にも死滅回遊魚の種類は豊富です。
レアな魚に出会うこともあるでしょう。
クマノミ、サザナミヤッコ、ハギの仲間、ベラの仲間など、美しい死滅回遊魚は多いです。
また、ナンヨウツバメウオなど特殊なフォルムな魚たちもいろいろといます。
可能性は無限大です。
死滅回遊魚採集のために用意するもの
今回は潮溜まり(タイドプール)で2cm程度のチョウチョウオを採集することを前提に、採集に必要な道具を挙げていきます。
網×2
網は必須です。
採集の要になります。
おすすめの網はこちらで詳しく紹介していますが、1cmの魚を逃がさないように、なるべく細かい網目で、直径30cm以上が望ましいでしょう。
もし小型のホンソメワケベラなどを捕まえようとするのであれば、ちょっと細かい程度の網目はくぐりぬけてしまいますが、網目が細かすぎると、水の抵抗が大きくなり、素早い操作ができなくなります。
本来ならばターゲットに合わせるのがいいですが、2cmのチョウチョウウオならば、細かい分には問題ありません。
柄は長さによって一長一短ありますが、二本とも長いと扱いづらいので、柄の長さのおすすめは、1本が50cm以下、もう一本は好みに応じてというところでしょうか。
ちなみに、二本必要な理由は、おすすめの採集方法で二本使うからなのですが、場所やテクニックによっては一本でも十分採集可能です。
生け簀
捕まえた魚を保存するためのケースです。
クーラーボックスを使えば、夏場でも水温が上がりづらいため、採集に夢中になっていても、魚が弱りづらいです。
また、携帯できる小型の容器を用意すれば、捕まえた場所でケースに入れられるため、魚を網の中で移動して弱らせてしまうというリスクを避けられます。
シュノーケリングセット
潮溜まりに入って捕まえる場合は、水着、マリンシューズ、シュノーケルがあると便利です。
海に入らず、潮溜まりの上から採集する場合には、磯で歩きやすい靴だけあればいいでしょう。
死滅回遊魚の採集方法
さて、ここまでで8月ごろに目星をつけた場所に行き、磯を探します。
干潮時でないと、潮溜まりは海の底ですので注意してください。
形状が複雑で隠れる場所が多そうな潮溜まりを見つけたら、死滅回遊魚が潜んでいる可能性大です。
死滅回遊魚の見つけ方
まず、死滅回遊魚を捕まえるためには、見つけなければなりません。
そこで、上から観察してみましょう。
風があったりすると、さざ波がたつので、潮溜まりに入ってしまった方が見やすいです。
そして、死滅回遊魚は意外と見つかりません。
いないから見つからないパターンもありますが、いても見つからないパターンも多いです。
なぜなら死滅回遊魚の多くは、警戒心が強く、岩の隙間などに隠れていることが多いからです。
じっくり出てくるのを待ってみてもいいですし、海の中に入って覗いてみてもいいでしょう。
はじめのうちは思うように見つけられないことも多いので、粘りが必要です。
死滅回遊魚の捕まえ方
さて、それでは2cmほどの小さなチョウチョウウオを見つけたらどうしましょう。
潮溜まりの大きさによっては、浅くて、海に入れない場所も、海に入らないと捕まえられない場所もあります。
そのため、海に入れる準備をしていった方がいいですが、海に入りたくない方は、海に入らずとも採集できる場所で探しましょう。
例えば隠れる場所があるものの浅い潮溜まりや、深いけれど狭い潮溜まりですね。
そして捕まえ方は海の中からでも、外からでも共通です。
前提として、網で魚を追っかけまわすようなことはしません。
それでは多くの場合失敗します。
海の中では魚の方が速いですから。
ただし、極小の魚やハコフグは網一本で追いかければ捕まえられることもあります。
死滅回遊魚をはじめとした海水魚採集では、網でのはさみこみが基本です。
魚の両側から網で挟み、片方の網に入るようにもう片方の網で誘導して追い込む方法ですね。
岩の隙間などに逃げ込まれないように、退路を網でうまく断ちつつ誘導します。
当然、魚は網に警戒しますが、他に逃げ場がなかったり、焦ったりしていると、網の中に飛び込んできます。
はじめのうちは、上手くいかないかもしれませんが、トライアンドエラーで慣れていきましょう。
まとめ
今回は初心者向けの潮溜まりにおける死滅回遊魚の採集方法をご紹介しました。
誰でもとっつきやすいように書いたつもりではありますが、魚たちも馬鹿ではないので、簡単には捕まってはくれません。
また、種類によっても、逃げ方、隠れ方の特徴が大きく異なります。
試してみて慣れてください。
最後に、ここまで読んでくださった方に、最後に私の死滅回遊魚採集のバイブル「磯採集ガイドブック」をご紹介しておきます。
少し古い本(2004年)ですが、死滅回遊魚をはじめとして、磯や漁港でかわいい魚たちを捕まえる方法や、どんな魚なのかが詳しく載っています。
これまで、死滅回遊魚採集に関する書籍は手あたり次第読んできましたが、いまだにこの本を上回るクオリティの本には出会えていません。
写真付きで分かりやすく書かれており、初心者の方にもおすすめです。
また、海水魚探索・採集に関する記事はこちらでまとめているので良かったらご覧ください。
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