絶滅危惧種・国内希少野生動植物種・天然記念物の違い

絶滅危惧種・国内希少野生動植物種・天然記念物の違い

生息数の減少や珍しい生き物に付けられる名前はいくつかあり、その中でよく聞くものが、「絶滅危惧種」、「国内希少野生動植物種」、「天然記念物」になります。

今回は生き物を説明する際に良く用いられるこれらの単語の意味の違いをご説明します。

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意味

まずはそれぞれの単語の違いに注目しつつ、それぞれの単語の意味、そして何のためにある単語なのかをご説明します。

絶滅危惧種

絶滅危惧種はその名の通り、個体数の減少により絶滅しそうな生物種のことです。

様々な機関が作成したレッドリスト上で、絶滅危惧種と指定された生き物が絶滅危惧種と呼ばれます。

レッドリストは、絶滅しそうな野生の生き物のリストであり、国際機関であるIUCN(国際自然保護連合)、環境省、47都道府県、その他自治体などが作成します。

レッドリストでは、絶滅のリスクに照らしあわせ、野生生物をいくつかのカテゴリーに分類しています。

例えば、環境省のレッドリストのカテゴリーは以下になります。

絶滅 (EX)我が国ではすでに絶滅したと考えられる種
野生絶滅 (EW)飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種
絶滅危惧Ⅰ類 (CR+EN)絶滅の危機に瀕している種
絶滅危惧ⅠA類(CR)ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
絶滅危惧ⅠB類(EN)ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
絶滅危惧Ⅱ類 (VU)絶滅の危険が増大している種
準絶滅危惧 (NT)現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種
情報不足(DD)評価するだけの情報が不足している種
絶滅のおそれのある地域個体群 (LP)地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの
出典:環境省

このうち、絶滅危惧Ⅰ類~絶滅危惧Ⅱ類までが絶滅危惧種と呼ばれます。

国や各自治体から、多くのレッドリストが出ておりますが、これは、国レベルで見たらたくさんいる生き物でも、地方レベルで見たら絶滅しかけている場合もあり、場所などにより絶滅へのリスクが全く異なるためです。

なお、このレッドリストの目的は、社会に警鐘を鳴らし、情報として様々な場面で役立ててもらうことであり、捕獲禁止などの法的措置は何もありません。

国内希少野生動植物種

国内希少野生動植物種は今回のテーマの3つの中では最も聞かない名前だと思います。

こちらは、絶滅のおそれがある生き物の中で、人の活動の影響で種の存続に影響をきたしている生き物です。

国内希少野生動植物種は環境省により管轄される、種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)により指定される野生生物種になります。

種の保存法は、絶滅の危機に瀕している野生生物たちを守るために作られた法律で、そこで指定されている国内希少野生動植物種は、原則として、採集・販売などが禁止されます。

種の保存法については、こちらに詳しくまとめていますので、良かったらご覧ください。

天然記念物

最後に天然記念物です。

天然記念物は名前は聞いたことはあっても、その意味は意外と難しく、知らない方も多いと思います。

天然記念物とは、この国にとって、学術的価値が高い自然のものの中で、重要なものとなります。

あくまで、学術的価値を重視した選択となるため、数が少ない生き物が選ばれるわけではありません。

こちらは文化庁が管轄する、文化財保護法や文化財保護条例により指定され、文化的な観点で、貴重な自然関連のものや生き物、区域を守ることが目的とされます。

また、法的にも採集や伐採の規制がかけられます。

違い

ではこの3種の違いは一体なんなのかというところで、細かい違いを一つずつ列挙して行ってもいいんですが、結局なにが違うのかを知りたいと思うので、端的にまとめます。

まず、絶滅危惧種と国内希少野生動植物種は同様の思想により指定されています。

それは、どちらも絶滅しそうな生き物を守るということです。

絶滅危惧種はシンプルに絶滅しそうな野生生物のことです。

そして、その中で人の活動が大きく影響を及ぼす生物を、法的措置により守るために指定されたのが、国内希少野生動植物種です。

どちらも環境省の管轄で、あくまで生き物を絶滅から守るための指定となります。

一方で、少し毛色が違うのが天然記念物です。

天然記念物は、文化的に価値がある自然の記念物のことなので、環境的な側面は考慮していません。

その生物の数が多い・少ないは関係ないんです。

例えば、有名な奈良のシカは増えすぎて害があるくらいですが、文化的な価値があることから天然記念物に指定されています。

このように天然記念物は、環境面を考えたらマイナスになることすらあります。

まとめ

今回は「絶滅危惧種」、「国内希少野生動植物種」、「天然記念物」の違いをまとめてみました。

イメージとしては、

絶滅しそうな生き物が「絶滅危惧種」

絶滅危惧種の中で法的に守られている生き物が「国内希少野生動植物種

文化的に重要な自然のものが「天然記念物」

ということでした。

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2020年5月5日生物情報知識

Posted by lunalion