トリクティス期のチョウチョウウオの変化
今回、串本での海水魚採集を通して、トリクティス期のチョウチョウウオを採集することができたので、その子の色彩変化観察を含めて、チョウチョウウオの形態がどのように変化していくのかを解説していこうと思います。
なお、今回の串本遠征の記事のリンクを貼っておくので良かったらご覧ください。⇒ 【漁港採集】、【磯採集】
「トリクティス」とは
チョウチョウウオの変化の話をする前に、まずはトリクティスという一般人にとっては聞きなれない単語についてご説明します。
トリクティス(トリクチスと言ったりもします)とはチョウチョウウオ科の稚魚・幼魚のことを指します。
トリクティス期と言えばチョウチョウウオの稚魚時代のことで、トリクティス幼生と言えばまだ1cm弱程度のチョウチョウウオの幼魚のことです。
チョウチョウウオはふ化直後は浮遊生活を送り、プランクトンを食べます。
この期間をトリクティス期と呼び、成魚とは全く違う見た目をしており、まるで兜を被ったかのような大きい頭と、光沢のある色彩で、模様がほとんど出ません(写真は下の方でお見せします)。
大きい頭は、この時期特有のもので、硬い骨格に覆われることで頭でっかちになっています。
なぜこのような大きな頭になるのかはあまり分かっていません。
また、光沢のある色については、浮遊生活をするにあたり、波や流れ藻に紛れるためという説がありますが、真実は不明です。
トリクティス期のチョウチョウウオ採集
チョウチョウウオの仲間がトリクティス期である期間は浮遊生活を送っている間ですので、磯などに定着してしまうとすぐに光沢のある色は失われ、大きな頭も徐々に失われていきます。
そのため、トリクティス幼生を捕まえようと思ったら浮遊期のチョウチョウウオを捕まえるのがてっとり早いです。
チョウチョウウオが流れ着くような漁港に行くと、まだ到着したばかりのトリクティス幼生が浮遊していることがあるので、彼らを掬って採集しましょう。
トリクティス期のチョウチョウウオの変化
今回、南紀串本の夜の漁港でトリクティス期のチョウチョウウオを掬い上げたので、その模様の変化を追っていきます。
採集直後
採集直後のトリクティス幼生は全くチョウチョウウオに見えません。
頭は丸みを帯びて大きく、模様もほとんどありません。
体表面はシルバーやゴールドに光り輝いており、事前情報なしだとチョウチョウウオだとは思わないでしょう。
大きさは1cmそこそこでまだ小さいです。
採集から一晩
トリクティス幼生を採集から一晩置いたら、かなり模様がはっきり入ってきました。
目元の黒線がこれだけ鮮明にあると、チョウチョウウオの仲間であることがはっきり分かります。
体はまだまだ光沢を帯びており、種類ははっきりとは分かりません。
採集から二晩(水槽に入れた)
このトリクティス幼生を水槽に入れてみて一晩置いたところ、しっかり色、模様が出てきました。
まだ光沢は少し残っているものの、だいぶ失われつつあります。
これだけはっきり模様が出てくると種類も分かります。
そう、フウライチョウチョウウオでした。
模様が出てくるまでは「何になるのだろう?」というワクワク感と楽しみがあり、ソーシャルゲームのガチャみたいな楽しみがあります。
10年以上前に三浦半島で5匹トリクティス幼生を捕まえた時は、4匹がナミチョウでしたが、1匹がセグロチョウチョウウオになり、興奮した覚えがあります。
トリクティス期が終わると
トリクティス期が終わると、大きな頭は影も形もなくなり、むしろ口が尖ったような形態に変化します。
光沢もほとんどありません。
目の部分には帯状の黒線が入り、目を分かりづらくし、背びれ付近に目のような黒い模様があることで、外敵に目の位置を錯誤させ、外敵と遭遇した際の回避率を上げていると言われています。
まとめ
今回はチョウチョウウオのトリクティス期について解説していきました。
トリクティス期があるからこそチョウチョウウオの仲間が黒潮に乗って広範囲に拡散できるという背景もあるみたいです。
トリクティス幼生については分かっていないことも多く、今後の研究が待たれますね。
また、海水魚探索・採集に関する記事はこちらでまとめているので良かったらご覧ください。
ディスカッション
コメント一覧
このコメントは管理者のみ閲覧できます。